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【天気予報】登山のときに参考にしている天気予報サイトと活用方法!

奥穂高岳への登山道からの眺め ノウハウ
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登山の計画を立てるときに、登山向けの天気予報サイトを活用している人は多いと思います。天気予報を参考にして登山の日程を決めたり、どの山に行くかを検討したり……。ただ、地形が複雑なこともあって、山の天気は変わりやすく、麓の町の天気とは大きく異なることも。それでも、できるだけ好天での登山をしたいですよね。

この記事では、一応(?)気象予報士の資格を持つ筆者が、登山をするときに利用している天気予報サイトの紹介と、その活用方法を紹介します。

難しい理屈はいいから、どのサイトをどう活用しているのかをすぐに知りたい方は、こちらからご覧ください。

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山の天気予報は当たらないのはなぜ?

登山者向けの天気予報を提供しているWebサイトやアプリ、サービスはたくさんあります。登山をされている方は、そんな天気予報を参考にして、登山の計画を立てているかと思います。

ところが、当たらないことが多いですよね。「晴れの予報だったのに、山頂についてみたら真っ白で何も見えない!」なんてことはよくありますし、「麓の町は降水確率0%だったのに山では小雨が降ってきた!」ということもよくあります。

実際、山の天気予報の的中率は、ふだんの天気予報で目にする都市の天気予報に比べると、かなり的中率は低いのではないかと思います。まずは、その理由について簡単に説明していきます。

数値予報の格子間隔は数km~20km程度

現在の天気予報は、スーパーコンピュータによる数値予報がベースになっています。数値予報では、地球全体(あるいは予報をするエリア)を細かな格子に分割して、各格子内の代表点の物理量(気温、風、気温・水温等)を、物理法則に基づいてシミュレーションします。

数値予報で利用するグリッドの例(全球モデル)

数値予報で利用するグリッドの例(全球モデル)

(出典)数値予報とは(気象庁Webサイト)

上の図は気象庁のWebサイトに掲載されている例ですが、このように、地球の大気を三次元的に分割して、各格子の物理量をスーパーコンピュータでシミュレートするのです。

そして、この格子の分割の方法によって、数値計算のモデルが異なっています。気象庁が採用している主な数値予報モデルは以下のとおりです。

モデル 予報領域 格子間隔 予報期間
局地モデル
(LFN)
日本周辺 2km 10時間
メソモデル
(MSM)
日本周辺 5km 39時間
78時間
全球モデル
(GSM)
地球全体 約13km 5.5日
11日

※上記以外にも、メソアンサンブル予報システム(MEPS)、全球アンサンブル予報システム(GEPS)、季節アンサンブル予報システム(季節EPS)などのモデルもあります。

(出典)気象に関する数値予報モデルの種類(気象庁Webサイト)

ここで重要なのは「格子間隔」です。この格子間隔が細かいほど、実際の地形に即した予報ができることになります。

気象庁のモデルでは、主に今日と明日の天気予報に使われている「メソモデル」で5km、週間予報に使われている「全球モデル」では13kmとなっています。つまり、それぞれ、5km×5km、13km×13kmの面積を1つの数値で代表させて計算をしているということです。

数値予報で再現できる地形は数十km程度

山の天気予報で重要なのは、複雑な山の地形をどこまで再現できているかです。その観点で現在の数値計算モデルの格子間隔を見てみましょう。

一般的に、数値計算モデルで再現できる地形の大きさは、格子間隔の5~8倍程度のスケールと言われています。つまり、

  • 局地モデル(格子間隔2km): 10~16km以上の地形を再現可能
  • メソモデル(格子間隔5km): 25~40km以上の地形を再現可能
  • 全球モデル(格子間隔13km): 65~104km以上の地形を再現可能

ということになります。

ここで、この規模のスケールを、日本の山岳地帯の地形と比べてみましょう。

上は、北アルプス南部の上高地周辺の地図です。上高地を流れる梓川を挟んで、西側に槍・穂高連峰、東側に常念山脈が連なります。

この二つの山脈の距離を、ほぼ同緯度にある奥穂高岳(地図上は「穂高岳」)と蝶ヶ岳の山頂間の直線距離として計ってみると約7kmとなります。

この7kmという値を、数値計算モデルで再現できる地形スケールに当てはめてみると、最も細かい格子間隔の局地モデルですら十分に再現できていないことがわかると思います。

常念山脈は、その西側にある標高3000メートル級の槍・穂高連峰による地形ガードが働き、北アルプス南部では最も天気が良いエリアなのですが、現在のスーパーコンピュータでの数値計算では、このような事象が再現できないということになるのです。

山地の特性に合わせた天気予報は作成が難しい?

山の天気予報に限らず、実際に天気予報として発表するには、スーパーコンピュータでシミュレートされた数値予報をもとに、地形や地域の特性や、数値予報モデルの「クセ」を補正する作業が必要になります。そもそも、数値計算モデルの結果は、その格子の代表点の物理量(の予測)を示しているだけですので、その物理量から、天気や降水量、降水確率などの、実際に天気予報として発表される「予報」に変換してあげる必要があるのです。

現在の天気予報の作成手順

現在の天気予報の作成手順

(出典)数値予報とは(気象庁Webサイト)

気象庁のWebサイトにも掲載されていますが、真ん中の「数値予報」から、応用にある「格子点値」(GPV)を取得し、それを統計処理したものをベースに、一番右側の「予報」を作成します。

この「予報」を作成するにあたり、実際には、スーパーコンピュータによる数値計算結果と、その予報時刻に実際に観測された気象状態(天気、気温、風、降水の有無、降水量など)を比較して補正していきます。要は機械学習的な手法を使って、各予報地点の特性やクセを学習させていくわけです。「このパターンのとき、地点Aの気温は実際より低めに出るため、プラスに補正する」みたいなことを学習させるわけですね。

それでは、山の天気予報でもこのような補正をすればよいのでは? と思われるかもしれませんが、実際には以下の理由でなかなか難しいのが現状です。

  • 山の中では実際の観測値(気温、風、降水量など)を継続的に取得するのが難しい
  • 地形が複雑なため、近くの山でも天気の傾向が異なることが多く、山毎に補正が必要となる

特に、正確な観測値が得られないのは致命的です。数値計算結果を補正するための元データ自体がないということになるわけですから……。

ということで、数値予報で「数値」自体は出るものの、そもそも山の地形を考慮した精度は(少なくとも現在では)ないうえに、それを補正することも難しい、というのが現状だと思います。

以上のような背景を踏まえて、筆者が登山するときにどのような天気予報サイトを活用しているかをご紹介します。

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Windyや通常の天気予報サイトで天気の傾向を把握

まずは、山の天気に特化した予報ではなく、一般的な天気予報を確認して、天気変化の傾向を把握します。

1週間程度の天気傾向を把握するには通常の天気予報サイトで十分

山の天気の予報が難しいとはいっても、移動性高気圧に覆われて全国的に晴天であれば、山の天気も良いことが期待できますし、前線が停滞して全国的に雨であれば、山でも雨、もしくは、大荒れの天気となる可能性が高いです。

これくらい、ざっくりしたお天気の傾向をつかむのであれば、以下に示したような一般的な天気予報サイトで十分です。

これらのサイトの週間天気予報、2週間予報を参考にして、おおまかな天気の傾向を把握します。参考にする地点は、登山を予定している山の麓の地点で良いでしょう。

もう少し厳密にいうと、山の風上にあたる麓のお天気のほうが参考になります。山では風が吹いてくる斜面から雲が発生することが多いためです。例えば、南八ヶ岳に登るとき、登山をする日が西風の予報であれば、西側の麓の茅野市あたりのお天気が参考になります。

Windyで複数のモデルに基づく天気予報を比較

Windy(PC版)の画面

Windy(PC版)の画面

Windyも参考にします。Windyはチェコの企業が提供する天気予報サービスで、無料でも多くの情報を視覚的に見ることができます。

登山のための天気予報という観点では、手軽に海外の数値計算モデルの予報を見ることができる点で有用です。日本の天気予報サイトのお天気は、気象庁の数値計算モデルの結果を利用していることが多いですが、Windyでは以下の4つの数値計算モデルを基にした天気予報を見ることができます。

  • ECMWF(欧州中期予報センター,9km)
  • GFS(アメリカ海洋大気庁,22km)
  • ICON(ドイツ気象局,13km)
  • METEOBLUE(スイス バーゼル大学の気象サービス、モデルはNOAAを利用)

どれが正しいということではなく、それぞれ別のモデルでシミュレートした結果をもとにした天気予報が見られますので、見比べてお天気の傾向を把握します。

Windyアプリでの予報モデル毎の比較

Windyアプリでの予報モデル毎の比較

Windyでは、上のように、各モデルの予報を並べて見ることができます。予報地点(上の画面の例では「丹沢山」)を入力して「予報を比較」を選択すると上記のような画面になります。

どのモデルでも晴れ予報であれば、実際にも晴れる可能性は高いということになりますし、モデルによって予報がまちまちであれば、不確定要素が大きいと判断します。

登山の1週間前~2日前の間は、こんな感じでおおまかな天気の傾向を把握しておきます。登山当日のお天気が良くなさそうであれば、日程を変更する、別の山に変更するなどを考えておきます。

ただし、この段階では、細かな山の予報はあまりあてになりません。Windyで山名を指定するとその山の天気予報を表示できますが、あくまで大まかな傾向を把握するくらいにしておきましょう。

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専門的な天気予報で直前に山の天気を確認

登山の2日前くらいになると、より確度の高い天気予報が出てきますので、それを確認します。私は「ヤマテン」とSCW、YamaYamaGPVを利用しています。

「ヤマテン」で山の天気を確認

「ヤマテン」のサンプル画面

「ヤマテン」のサンプル画面

(出典)ヤマテンWebサイト

私が利用しているのは「ヤマテン」(有料、330円/月)です。登山の天気予報に特化した天気予報サービスで、以下のような特徴があります。

  • 山岳気象予報士が手作りで予報する「スペシャル予報」(翌日、翌々日の予報)をメジャーな60の山で提供
  • 「ノーマル予報」(48時間先までの時系列天気予報)を270の山で提供

前述のように、山の天気予報は難しいのですが、「ヤマテン」では予報する対象を絞って、気象予報士が毎日手作りで予報をしています。個々の山の気象条件や地形を加味した予報を作成しているということで、精度が高くなっています。

「スペシャル予報」の対象となる山や山域は限られていて、東京周辺の日帰り圏の山では、丹沢山、雲取山(奥秩父・奥多摩)、両神山・大菩薩嶺(奥秩父)くらいです。それでも、スペシャル予報には気象予報士のコメントが出ていて、これを読むと「山域東部では……」のような記載があるので、登山をする予定の近くの山域のコメントを参考にします。

一方、「ノーマル予報」は、

ヤマテンが独自に開発した山岳気象計算式に基づく予報

ということですので、気象予報士が手作りしている「スペシャル予報」の山域に比べると精度は低いものの、一般的な天気予報に比べると精度は高いと思われます。東京から日帰り圏の奥多摩や奥秩父、丹沢の山も対象になっているところが多いです。近くの山域の「スペシャル予報」のコメントとあわせて活用しています。

私は「ヤマテン」をすでに2年ほど利用していますが、2日先までの天気予報しかわからないものの、的中率はかなり高いです。気象予報士のコメントには、予報の不確実性が高い場合はそのことがしっかり記載されているので、それも含めて登山の計画に役立てています。

暴風や強雨などが想定される場合には、登山上のリスク(暴風による滑落や沢の増水など)も掲載されますので、リスク回避にも役立ちます。

有料サービスではありますが、それだけの価値がある予報になっていると個人的には感じています。

雲の予報に役立つSCWとYamaYamaGPV

山の天気予報であれば「ヤマテン」がおすすめなのですが、雲の予報を確認したいときもあります。眺望が良い山に登るときや、山頂から富士山が見える山に登りたいときなど、単に「晴れ」ではなく、できるだけ雲がない「快晴」に近い日を狙いたいですね。

SCWの画面(スマホ版)

SCWの画面(スマホ版)

そんなときに利用しているのがSCWです。SCWは気象庁の数値予報結果を利用した天気予報サイトですが、雲量を確認するのに適しています。

上の画像のように、予測される雲量を黒(雲量0%)~白(雲量100%)で表示してくれます。あわせて、予想される降水量も示してくれます。天気予報では「晴れ」だけど、雲の予報はどうだろう? というときにSCWを利用しています。

SCWでは以下のモデルを選択できます。

モデル 格子間隔 予報時間 更新回数
局地 2km 10時間先 1日24回
詳細 5km 39時間先 1日8回
詳細78 5km 78時間先 1日2回
広域 20km 132時間先 1日4回
広域264 20km 264時間先 1日2回

(出典)SCW(説明-モデル種類と更新時刻)

局地モデルの10時間先までの予報は有料会員のみとなっていますが、それ以外は無料で利用できます。

「詳細モデル」が気象庁のモデルでいうところの「メソモデル」です。今日・明日の天気予報に使われているモデルですので、それなりに精度は高いです。

前述のように、細かな山の地形までを考慮した補正はなされていないと思いますので過信は禁物ですが、少なくとも「詳細」での半日~1日後くらいであれば、それなりに精度は良いと感じています。

YamaYamaGPVの画面

YamaYamaGPVの画面

特定の場所の雲量の変化を見たい場合には、YamaYamaGPVが便利です。「YamaYama」というサイトの名称どおり、山名を選択するだけで、雲量の時系列の予報をグラフで示してくれます。

YamaYamaGPVが便利なのは、全体雲量だけでなく、上層・中層・下層雲量を分けて表示できる点です。

  • 低山(1,500メートル以下)では、下層雲量が多いと山頂は真っ白(霧)の可能性が高そう
  • 上層雲量だけが多い場合には、低山なら山頂でも視界はありそう
  • 高山(標高2,500メートル以上)で上層・中層雲量が少なく、下層雲量が多いなら雲海が期待できそう

このように、登山をする山の高さと、上層・中層・下層雲量を比べてみると、かなりいろいろなことがわかるのです。

YamaYamaGPVでは、39時間、84時間、264時間の予報を見ることができますが、私はSCWの「詳細」と同じ39時間の予報を使っています。

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山の天気予報サイトを上手に使って登山を楽しもう!

ここまで、私が実際に登山のときに利用している山の天気予報サイトとその使い方を紹介してきました。まとめると以下のようになります。

  • 登山の1週間前~10日前くらいから、気象庁やtenki.jpなど通常の天気予報サイトを確認して、お天気のおおまかな傾向を把握する
  • 2日前、前日には、「ヤマテン」で詳細な天気予報を確認、「SCW」「YamaYamaGPV」で雲の予報を確認して、最終的に登山を決行するか、中止あるいは別の山に変更するかなどを検討する

こんな感じで利用しています。

最初に述べたように、山の天気予報は、地形が複雑であるうえに、観測値の継続的な取得がむずかしいこともあって、地上の天気予報よりも難しい、つまり、精度が低いです。そのため、1週間も前から、細かな山の天気予報を気にしても仕方がありません(気にしたくなる気持ちはよくわかりますが……)。おおまかな天気の傾向を把握して、雨になりそうなら日程や登る山の変更をあらかじめ考えておく、くらいでよいと思います。

2日前や前日になったら、登山の目的に応じて天気予報を利用するのがおすすめです。山頂から絶景を眺めることが目的なら、やや厳しめに「快晴」または雲の少ない「晴れ」を狙う方がいいでしょう。

とはいえ、あまり気にしすぎると、山に行けなくなってしまいます。登山はアウトドアを楽しむもので、それには天候も含まれていると考えています。天候リスクをなるべく回避しつつ、その日の天候も含めた登山を楽しむのが良いですね。


以上、『【天気予報】登山のときに参考にしている天気予報サイトと活用方法!』でした。登山は天候リスクがつきまとうアクティビティなので、ある程度、天気予報の知識を持っておいた方がいいです。とはいえ、気にしすぎてもつまらないので、登山の目的に応じて活用するくらいがちょうどいいですね。

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