2025年の北アルプス縦走登山は、新穂高温泉~双六岳~西鎌尾根~槍ヶ岳~上高地と歩いてきました。前回の記事では、双六小屋を出発して、西鎌尾根を歩き、槍ヶ岳に登頂するところまでをお届けしました。今回は、槍ヶ岳山荘での宿泊と、翌日の上高地への下山の様子をお届けします。
西鎌尾根~槍ヶ岳の登山の様子は、前回の記事をご覧ください。絶景の稜線歩きに、槍ヶ岳山頂からの360度の大展望を、写真多めで紹介しています。

【槍ヶ岳山荘】雹・雷雨のち晴れ、夕景の絶景を満喫!
槍ヶ岳に登頂したあとは、槍ヶ岳山荘に宿泊。夏山らしく、午後は雹と雷雨がありましたが、談話室でまったりしたり、名物のスイーツを食べたりして過ごしました。雷雨が止んだあと、夕方は再び晴れて、山荘前から絶景を楽しむことができました。
山荘前で絶景を眺めつつ槍ヶ岳カレーを食べる
槍ヶ岳山荘にチェックインして、荷物を部屋に置き、再び外へ。相部屋は2段ベッドで、一人分のスペースはそれほど広くはないものの、仕切りがありました。早くチェックインしたおかげか、端のスペースを割り当ててくれました。
入口を入って右手にある軽食コーナーで「槍ヶ岳ビーフカレー」を注文。売店で缶ビールも購入して、外のテラス席へ。槍ヶ岳登頂成功に乾杯!
「槍ヶ岳ビーフカレー」は、槍ヶ岳の形に盛られたライスが特徴で、結構ボリュームがありました。
登頂した時はあんなに晴れていたのに、12時を過ぎるころにはどんよりとした曇り空に。そんな曇り空の下、荷揚げのヘリコプターがやってきました。山荘と槍ヶ岳の間にあるスペースに荷物を降ろしていました。かなり低いところまで下りてくるので、ちょっと驚きましたね。
談話室で登山談義、外は雷雨と雹!
お昼を食べたあとは、2階にある談話室へ。まだ早い時間だったためか空いていました。
談話室でくつろいでいたら、雹が降ってきました。窓越しなのでわかりづらいですが、赤い屋根の上の白くなっているところは、雹が積もっています。小さめの雹でしゃりしゃりとした音がしていました。
14時になると、槍ヶ岳山荘名物のスイーツの販売を開始するというアナウンスがありました。どんなものか良く知らなかったのですが、談話室の何人かが早速買ってきていたのを見て、おいしそうだったので軽食コーナーへ。
モンブランを購入。しっかりとしたスイーツで、おいしくいただきました。
談話室から軽食コーナーに行く途中、山荘の入口の前を通るのですが、先ほどの雹にあった人たちがたくさん到着していました。幸い、雷の被害はなかったようですが、登山中に雹に遭うのも避けたいですね……。
雷雨のち晴れ、穂先に登る人を眺める
午後4時前には雷雨が止んだので外へ。
外は高曇りといった感じでしたが、周囲の視界は開けていました。雷雨が止むのを待っていたかのように、槍の穂先を目指す方々がたくさん! 槍ヶ岳山荘に宿泊すると、槍ヶ岳に登頂するチャンスが多くあるのがメリットですね。
山荘前からの槍沢側の眺めです。手前の赤い屋根は殺生ヒュッテ、左側の尾根上にあるのはヒュッテ大槍。さすが槍ヶ岳、人気の山で、この槍ヶ岳山荘も含めて、すぐ近くに3つも山小屋があります。
右側の谷になっているところが槍沢ルートで、明日はここを下っていきます。
午後5時から夕食。食堂は地下、というか、入口から一つ下の階にあります。大きな山小屋だけあって行列になっていましたが、スタッフも慣れたもので、スムーズに案内してもらえました。
ごはんとみそ汁は自分でよそうスタイル。ごはんをおかわりして満腹になりました。
山荘横で眺める夕景
午後6時過ぎ、夕景を眺めるために再び外へ。左上の三角の山が常念岳ですが、その下の方に槍ヶ岳の影が映っていますね。
今日歩いてきた西鎌尾根には滝雲がかかっていました。見事な眺めでした。
夕陽を受けてほのかに染まる槍ヶ岳。この時間でも登る方がちらほら。山頂で夕陽を眺めるのでしょうね。
午後7時過ぎ、日没を迎えました。西空は低い雲が多く、夕陽は雲の中に沈んでいきました。
1時間近く外で夕景を眺めていましたが、かなり寒かったですね。関東では40℃に迫る猛暑の日でしたが、さすがに標高3000メートル。日が傾くと一気に冷えてきます。
ということで、この日は就寝。
槍ヶ岳の横から昇る朝陽
翌朝、午前5時からの朝食前に外へ。ご来光を眺めに山荘前へ。すでに日の出を迎えていて、槍沢の南側斜面が赤く染まっていました。そして、遠くには小さく富士山まで見えています! 昨日の雷雨のせいか、空気が澄んでいたのだと思います。
朝陽に照らされて染まる大喰岳。槍ヶ岳のすぐ南側の山です。斜面にはまだ雪が残っていますね。
午前5時前、槍ヶ岳の横から朝陽が昇ってきました。
そのまま食堂へ。午前5時から朝食です。オーソドックスな朝食ですが、十分ですね。おいしくいただきました。
【槍沢ルート】槍沢を下って上高地に下山
最終日は、槍ヶ岳山荘から一気に上高地まで下ります。標高差1500メートル以上、距離にして20km近くあります。下りとはいえ、なかなか歩きごたえがあります。日差しがあたり始めると、下りでも暑くて難儀しました。
槍沢ルート上部の谷をジグザグに下る
午前6時前、下山開始です。一日お世話になった槍ヶ岳山荘をあとにします。
槍沢ルートの上部はU字谷になっています。ここをジグザグに下っていきます。
氷河が複数の方向から山を削り、その残った部分が槍ヶ岳になっているそうですが、この槍沢ルートの上部も氷河地形の一種なのでしょうね。
ジグザグに下っていきます。ところどころザレ気味のところもありますが、特に危険箇所はありません。谷筋のルートではありますが、このあたりは幅が広く開放的なU字谷になっています。その分、日差しを遮るものが何もないのですが……。
1時間近く下り、小さな広場のようになっているところに到着。ここで休憩している人が多くいたので、私も水分補給の小休止をしました。
登ってきた方は、みなさん盛んに槍ヶ岳に写真を撮っていますが、槍沢ルートを登ってくると、最初に槍ヶ岳を眺められるのがこの場所なのだそうです。ということで、ここで槍ヶ岳の雄姿とお別れということですね……。
水沢でキンキンに冷えた湧水を補給
先ほどの場所から少し下ったところに「水沢」という水場があります。湧水が勢いよく流れ出ていて、この水がキンキンに冷えています。ここで少し給水しました。
槍ヶ岳山荘の水は、天水を消毒したものなので、ちょっとぬるいのですよね。日差しが当たり始めてかなり暑くなってきたので、冷たい湧水がとてもおいしいです。
槍ヶ岳が見えなくなると、少し樹林帯に入ったり、また槍沢の谷に出たりを繰り返します。日当たりの良いところでは、ニッコウキスゲがたくさん咲いていました。大きく、鮮やかな花なので目立ちますね。
槍沢の谷の北側斜面を下っていきます。だんだんと谷が狭まってくるのがわかります。このあたりはまだ日差しを遮るものがありません。まだ午前7時半ですが、日差しが強く、かなり暑くなってきました。下りでこの暑さですから、登ってくる方は大変です。みなさん汗だくになっていますね……。
「滝見台」からは、対岸の滝を眺めることができます。
U字谷からV字谷へ、槍沢沿いの樹林帯を下る
午前7時半、天狗原分岐に到着。天狗原はこの写真の上にある盆地のような地形で、「逆さ槍」が見られる「天狗池」があります。この分岐からコースタイムで40分ほどですが、今日は先が長いのでパスします。
槍ヶ岳は見えなくなってしまいましたが、空の青さと木々の緑、それに雪渓の白がとても美しいです。
だいぶ谷が狭まってきました。槍沢の流れる水音がだんだん大きくなってきます。
午前8時過ぎに、ようやく樹林帯に入りました。標高はだいぶ下がってきていますが、直射日光を避けられるだけでだいぶ涼しいですね。
ババ平を経て槍沢ロッヂへ
午前8時半、ババ平に到着。ここはテント場があります。水場とトイレもあるので、快適に過ごせそうですが、それほど広くはなさそうです。この日はかなりテントが張られていました。ここにテント泊して、槍ヶ岳にピストンしてくるのでしょうね。
ババ平から下は、赤茶けた石や岩が多くなります。ところどころ、木の橋で沢を渡っていきますが、この小さな沢は、槍沢に注ぎ、上高地で梓川になるのでしょう。
午前9時、ようやく槍沢ロッヂに到着! ここまで3時間、ひたすら下ってきましたが、横尾まではまだ4キロもあります。
槍沢ロッヂは標高1800メートルにある山小屋。上高地から槍沢ルートで槍ヶ岳に登るときの宿泊地として良い場所にあります。とはいえ、槍ヶ岳までの標高差は1300メートル以上ありますし、ここまで下ってきてわかりましたが、途中からは直射日光をもろに受けるので、かなりキツいルートであることは間違いありません。危険箇所はないのですが、体力と暑さに対する備えが必要ですね。
槍沢ロッヂで、先ほど水沢で汲んできた水を飲みながら、軽く行動食を食べました。横尾まであと4キロ、横尾から上高地まで11キロ、合計であと15キロもあるのです……。
槍沢沿いの登山道を下って横尾に到着
槍沢ロッヂから先は、これまでに比べるとだいぶ傾斜が緩くなります。槍沢沿いの道も多く、標高は下がってきてはいますが、涼やかな風が吹いています。
「二ノ俣」の橋を渡りました。二ノ俣谷を流れるこの沢は、大天井岳の近くから流れてきているようです。このすぐ先で槍沢に注いでいます。
「一ノ俣」の橋です。一ノ俣谷は、東大天井岳~常念岳の西側を流れて、ここで槍沢に注いでいます。
ほぼ平坦な道になり、槍沢の川幅もだんだん広くなってきました。どこから「梓川」になるのかよくわかりませんが、見かけ上はもう上高地を流れる梓川そのものです。
午前10時15分、ようやく横尾に到着しました。槍ヶ岳山荘から4時間15分、とても長い下りでした。
横尾は、先ほど下ってきた槍沢ルートを登って槍ヶ岳へ行く道と、写真に写っている横尾大橋を渡り、涸沢カールを経て奥穂高岳や北穂高岳へと向かうルートの分岐点となっています。
しばらくベンチで休憩しました。
【上高地】小梨平でお風呂に入って帰路へ
横尾から先は歩き慣れた上高地の遊歩道。ほぼ平坦で歩きやすい道ですが、上高地まで11キロと長丁場です。上高地のすぐ手前の小梨平でお昼を食べてからお風呂に入り、予約していたバスに乗って無事に帰宅しました。
ひたすら遊歩道を歩いて小梨平へ
10時40分、横尾を出発。一路、上高地を目指します。
11時20分過ぎに徳沢に到着。写真を撮り忘れましたが、徳澤園で定番のコーヒーソフトを購入して、ベンチで小休止。避暑地とはいえ日差しは暑いので、ソフトクリームでクールダウンできました。
梓川の対岸に聳える明神岳。奥に連なるのは穂高連峰の山々。こちらはまだ青空が見えますが、頭上は急速に雲が出てきました。今日はお昼前後から雨予報。上高地に到着するまでお天気が持つと良いのですが……。
12時20分、明神に到着。トイレをお借りして小休止。上高地まであと一息!
13時過ぎに小梨平に到着! 小梨平食堂でかきあげ蕎麦を食べました。このあと14時から小梨平のお風呂が営業するので、それまでゆっくり食事をしようという魂胆です。ですが、食べ始めたら、お風呂の営業開始のアナウンス。この日は土曜日だったためか、営業開始を早めたようです。
食事を終えて、すぐにお風呂に入りました。前泊したわさび平小屋以来、3日ぶりのお風呂でさっぱりしました。
雷雨の中、上高地バスターミナルから帰路へ
お風呂に入って、少し休憩してから上高地バスターミナルへ向かいます。夏休み最初の土曜日ということもあって、すごい人! そして、空模様がかなり怪しくなってきました。バスターミナルへ急ぎます。
14時過ぎ、上高地バスターミナルに到着! ぽつぽつと降ってきましたが、何とか濡れずに済みました。
バスの時間まで上高地インフォメーションセンターで休憩していたら、突然の土砂降り! もう少し遅かったら危なかったですね。
このあと、予約していたバスで新島々駅へ移動。新島々駅で電車を待っている間も、かなりの土砂降りでした。屋根があるところで待つことができたのは幸いでした。
新島々駅から上高地線の電車で松本駅へ。松本駅からあずさ号で帰路につきました。お疲れさまでした!
槍ヶ岳登頂におすすめの西鎌尾根ルート
今回は、新穂高温泉~双六岳~西鎌尾根~槍ヶ岳~槍沢ルート~上高地と歩いてきました。
2日目の西鎌尾根~槍ヶ岳のコースはとても良かったです。最後の槍ヶ岳への上りはキツいですが、そこまでは正面に槍ヶ岳を眺めながらの絶景稜線歩きを楽しめます。とりたてて危険なところはなく、槍ヶ岳への上りで少しだけ鎖場があるくらいでしょうか。
双六小屋から槍ヶ岳山荘までコースタイムで4時間半。今回がそうだったように、朝早く双六小屋を出発すれば、午前10時頃には槍ヶ岳に登頂できます。夏山であれば、晴れている間に登頂できる可能性が高いです。それに、槍ヶ岳山荘に宿泊していた方々はすでに下山を始めていて、逆に、槍沢ルートから上ってくる方はまだ到着していない、空いている時間帯に穂先に登れるのもメリットですね。
今回のルートでは、1日目の小池新道も歩きやすくて良かったです。ずっと登りで、それなりに標高差はありますが、とてもよく整備されていますし、双六小屋まで急登もほとんどありません。前泊も含めて4日間で42キロも歩きましたが、足の疲れがあまりなかったのは、小池新道や西鎌尾根が歩きやすかったからだと思います。
また、新穂高温泉やわさび平小屋で前泊するか、夜行バスで早朝に到着するのであれば、比較的涼しい時間帯に標高を稼げます。
というわけで、西鎌尾根から槍ヶ岳を目指すコース、個人的にはとてもおすすめです!
今回の主な登山装備
- ウェア類
- アンダーレイヤ: モンベル ウィックロンの半袖Tシャツ
- ミドルレイヤ: モンベル 化繊 長袖シャツ
- 防寒着: モンベル ライトシェルパーカー(ソフトシェル)
- 防寒着: ユニクロ ウルトラライトダウンジャケット
- パンツ: ノースフェイス アルパインライトパンツ
- レインウェア上: モンベル レイントレッカージャケット(使用せず)
- レインウェア下: モンベル サンダーパス パンツ(使用せず)
- 靴下: フィッツ メリノウールの登山用靴下
- 登山靴: モンベル アルパインクルーザー2300
- 登山補助
- 膝サポータ ザムスト EK-3(両膝)
- ヘルメット
- 緊急用
- ファーストエイドキット
- ヘッドランプ、予備の電池
- ザック: ミレー サースフェー 40+5 (45リットル)
- 水
- ナルゲンボトル 1リットル(ポカリスエット)
- ペットボトルの水・お茶 0.5リットル×2本
行動中は、アンダーレイヤの半袖Tシャツ+ミドルレイヤの長袖シャツの2枚でした。7月下旬ということもあり、日差しがあるところはかなり暑いですが、標高を上げて稜線に出ると風が涼しいです。
防寒着にソフトシェルと薄手のダウンを持っていきましたが、ダウンは使いませんでした。ソフトシェルは、朝晩、山小屋の外に出るときに着用しました。
今回宿泊した山小屋では、わさび平小屋と双六小屋は水が豊富(無料)でした。槍ヶ岳山荘は天水で、宿泊者は無料でしたが、水はあまり豊富ではなく、飲み水用と、せいぜい歯を磨くくらいでした。天水利用なので、時期によっては水が不足気味になるのかもしれません。
以上、「【北アルプス】双六岳・槍ヶ岳縦走2025 (3)槍ヶ岳山荘宿泊後、上高地へ下山」でした。連日、午前中は天候に恵まれ、良い山行になりました。特に、2日目の西鎌尾根~槍ヶ岳の稜線歩きと山頂からの大展望は素晴らしく、思い出に残る山行となりました。
関連記事
北アルプス南部の主要登山口への公共交通機関でのアクセスをまとめた記事です。新穂高温泉へのアクセスについても記載していますので、ぜひご覧ください。

















































コメント